わたしが好きなシーン(自萌え
「追憶と未来の交わる場所で」
日頃よりお楽しみいただきありがとうございます。
今度は自分の作品の萌えポイントや好きなシーンを挙げていこうと思います。
前回に引き続きダイマです。
①渡海のステージを観る結衣子
立ち上がった渡海とほとんど変わらぬ高さにルイの顔があった。その頬に渡海は触れ、寂しそうに笑った。
始まったショーが終わりを迎える。そのはずなのに、結衣子は覚えた違和感を拭えないでいた。 ステージ、構成、演出、ストーリー、起承転結。いつものように始まった連想ゲームは、瑛二の写真集で結衣子の写真に添えられた、『結』の一文字にたどり着いた。
「ドラマの最終回……」
谷崎さんからステージの概要を聞いた時、『あれっ、そんな終わらせ方しちゃうの?』って思いました。批判的な意味ではなく、それで終わりに出来るのだろうかという単純な疑問でした。それはそのまま結衣子の疑問に繋がり、彼女だったらこれを観てどんな感想を抱くだろうと思ったとき、「ドラマの最終回」というセリフが自然と出てきた。
しばらく彼女から離れていた私の中に、結衣子という人格がはっきりと再誕した瞬間でした。
②緊縛に対する結衣子の姿勢
緊縛は命と誇りの応酬だ。気心の知れた相手であれば茶化すのも戯れになるところだが、初対面ではそうもいかない。それでも結衣子は鼻を鳴らし、不敵に笑って渡海を誘う。
なにせこっちは、瑛二や彼の師を含め、この身一つで何度もこうして緊縛師の前に肌を晒し、縄を教えてくれと嘆願し、縄と自身と受け手に向き合ってきた。そのうえで、愛する男の前で好きな男に縛られ、好きな男の前で愛する男に抱かれてきたのだ。
命を削った場数が違う。
「仲秋先生から、あなたはなにを学んだのかしら」
ここら辺、最初もっとあっさりでした。でも谷崎さんから「結衣子がなぜ怒ってるかちゃんと説明しなきゃ!」とお尻を叩かれ、「ははははい!!」っと足していたら、いろいろと出てきてしまった。まるで濁流のようでした。
③縄をバラ鞭に
言葉の代わりに返ってきたのは縄だった。折りたたんで束ねた二本の縄をバラ鞭のように振り下ろし、稜は結衣子の尻を打つ。一瞬だけ見た稜の支配的な顔が、閉じかけの瞼でかすんでいく。
鞭のような鋭い痛みはない。空気を裂く音を伴い、肌に渇いた戒めを与えるためだけの行為だ。それでいて屈辱感や背徳感は上回る。靴べらやベルトを使われるのと似た感覚だった。
何度か打たれたあとで今度は、縄でさらさらと優しく尻たぶを撫でてくる。痛みとの落差に鼻が甘く鳴り、結衣子はフットレストの生地に爪を立てた。
どんな官能シーンを書こうかなー、とエロ動画をPCで流していた時に、これをやっていた動画がありまして。 それは女王様のプレイでしたけど、もう見た瞬間思いましたね。「稜に似合う」と。
④仲秋先生と結衣子さん
静かに押し開けると、目線を少し上にやったところに、目尻を垂らして笑う顔があった。手に持った灰の中折れ帽を胸元に当て、彼はおどけたように頭を下げる。
「やあ、レディ結衣子。ちょっと早かったかな?」
和服でこの店を訪れるのも、結衣子のことをそう呼ぶ者も、彼一人だけだ。
「こんにちは、仲秋先生。お待ちしてました」
結衣子がゆったりとした笑みを返すと、仲秋は帽子を結衣子の頭に乗せて中へ入った。視界を覆うほどすっぽりと落ちてきたそれのつばを持ち上げて、結衣子はあとを追った。
黒い羽織を預かろうと肩に伸ばした結衣子の手に、仲秋が気づき、背を向ける。羽織はすっかり冷たくなっている。
袖を抜くと、樟脳に混じって漂ってきた甘すぎない白檀の香の匂いが、ぬっと身体に押し入ってきた。
還暦を迎えたと思えないほど顔も体躯も若々しいが、二分刈りの短髪に混じる白髪が増えた気がする。出会った頃と比べれば当然だが、どこか寂しいものを結衣子は感じた。
谷崎さんちのキャラクターにして、結衣子と過去に関わりのあった新キャラ、仲秋先生。
その初登場シーンです。 打ち合わせ中、とある緊縛師の「縛った受け手に誰が師か当てられた」というエピソードを結衣子に使わないかと谷崎さんからの申し出があり、二つ返事でOKしたら、じゃああれもこれもと過去エピが増えました。いいキャラクターです、先生。
⑤女王のレッスン
腕を握る手に今一度力を込めた。弾力がある腕だ。首筋の筋肉もしっかりある。まるで蝋のようなこのなめらかな肌に、縄が這うのを想像する。
渡海は、ぶっきらぼうでも縄で応えた。彼のうちにあるものを晒して、師に連れられてでも再び結衣子の前に現れた。
ならば結衣子も、晒すのが筋だ。向き合うとはどういうことか、身を持って。
「服を脱ぎなさい」
ゆらりと顔を上げる。立ち上がると、渡海が呆気にとられたような顔で結衣子を見上げている。結衣子はそれを、いつものように睥睨した。
「女王様の特別レッスンよ。私があなたを縛ってあげる」
まるでタイトル回収ですね。だけどこの宣言しかないと思ったので、思うがままに。
なかなか向き合おうとしない渡海とどう向き合えばいいだろう、と結衣子が考えた末の判断。
さて、渡海くんはわかってくれるでしょうかねぇ……。
⑥悩める男たち
「俺もうわっかんない……」
深々と項垂れ頭を抱えたそのさまに、つられるように瑛二もため息をもらした。
「安心しろ。俺もだ」
「ねえなにあの人。なにしてんのあの人。超展開すぎてついていくのやっとなんだけど」
「ついてってるだけすげぇよ。俺はお前が普通の人間で心底嬉しい」
「だよね? 俺が普通だよね? あー、よかった。一緒にいると感覚麻痺しそうでさあ」
「ああ、その気持ちもよくわかる。俺らはもっとわかんねえからな」
「無茶なこと無謀なことやめてって言ってんだけどなぁ……。ほんと妙なところで道理は通ってるからタチ悪いにもほどがある……」
よほど参っているのか、稜がひと通りまくし立てる。締めくくるような大きなため息まで再び聞こえてきた。
結衣子の性格をなにかと知っているだけに、思わず同情的な気持ちが湧き上がる。
夫婦になった稜は気苦労が絶えませんが、瑛二も結衣子をよく知っているだけに大概苦労します。
でも、それを言うほど心苦しくも思っていない。 むしろ前よりも頼ったり頼られたりってしている分、嬉しいと思います。
瑛二はずっと、結衣子に頼られないことを虚しく思っていましたからね。 その辺の変化も窺えるシーンになっているのかと。
⑦おしゅうとめさん
とすると必要なのは、依存的な甘えから脱し、思考するためのきっかけだ。
ベルリンのことを彼女に尋ねても、自覚がなければ、まともな答えは返ってこないだろう。叱責しても理由がわからないのなら意味がない。
考えていない者に「考えろ」と言っても無駄に終わる。だから、何を考えねばならないか、その種を植えるのがまず先決となる。
ベルリンのステージ。渡海の縛り。元恋人。憧れと理想。手元に置いておきたいほどの――。
そこまで考えたとき、ふと、度々たとえてきた言葉が脳裏をかすめた。
「あなたが渡海くんのモナリザね」
なんかほんと結衣子の態度が……おしゅうとめさん……。
なんだけど、このたとえは実は結構秀逸にできたと我ながら思ったし、谷崎さんにもお褒めいただいたのです。 最初は稜との会話で出てきましたね。
絵画みたい→そうそう、モナリザっぽい→え? っと。そんな勝手なイメージが、物語のキーになって嬉しかったシーンです。
⑧足並みのそろうノットの面々
瑛二はこっそりとため息を吐き、横の結衣子を見遣った。目を細め眉を上げて、なぜか訳知り顔でいるのが、悔しくも納得できてしまう。
「……なるほどな」
ぼそっと言うと、結衣子が「ね」と無感情な声で返してきた。すると稜も首を捻って腕を組む。
「ここまでだったっけな……」
「そう思うのも無理ないわ。極端なことして浮き彫りにしてるから。遥香ちゃんはどう?」
「うまく言えないけどもやっとします」
言いながら遥香の顔が気難しそうにしかめられた。
パートナーなのにどこかよそよそしい瑠衣と渡海を見て、わざと瑠衣を不安にさせ、渡海がどうフォローするか確かめようとした四人。結果は散々で、彼らはひそひそと相談します。
四人はちゃんと知っている。緊縛がどういう行為なのか。 そして最後に女王様は緊縛師さんに、「芽吹くか見たいわ、瑛二くん」と仰せになって頼る。
自萌だめです。とどまるところを知らないのでここらで自重します。
もうすぐ再開ですので、振り返りもかねてまた読み返していただけますと幸いです。
感想も随時お待ちしております!
あんけーと
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ましゅまろ
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