わたしが好きなシーン(自萌え
どうもどうも、感想もらうと「うはああああ」ってなってついSSネタを書いちゃうサイジョーサイコです。今回もさりげなく浮かんだものを中に混ぜました。
ささ、追憶の自萌え、いってみましょう!
①押して駄目なら……
「それがいい、そうしちまえ。そうすりゃマサも金輪際結衣子に関わらずに済むしな。あー、心配すんな。俺とルカは最後まで付き合ってやる。お前らのラストステージは見届けるよ」
軽い気持ちでした助言だったが、渡海はそれでもすっきりしていないような面持ちで、手元の縄をじっと見ている。瑠衣は迷ってでもいるような不安を浮かべて渡海を見た。
――これは、その気がゼロってわけでもないのか?
これまで散々周りに振り回され、押されてきた渡海だ。加えて仲秋への恩義もある。だが案外ここですっと引いてみたら、渡海なりの負けん気も、瑠衣のそれのように芽を出すのではなかろうか。
「大体困るよなぁ、フェチもなんもないのに、いきなりそういうめんどくせーもんを考えろって言われても」
瑛二は同情的な声音になって、うんうんと首を縦に振った。
渡海はだんまりを決め込んでいたが、しっかりと聞いてはいるようだ。そこで瑛二は、尖ったような鋭利な視線を誰にともなく向けた。
「ま、ルカがそのめんどくせー奴らともやっていけるのは特別だ。こいつが柔軟でいろんなものを見て、何ヶ月もかけて寄り添おうとしたからだ。それをマサに求めようっても土台無理な話だよな」
押して駄目なら引いてみろ大作戦。
瑛二の都合としては、結衣子と先生のこともあるし、割と本気でノットじゃなくてもいいって感じ。
作者の都合としてそうしてみようという気になったのは、イヴでも歩に対してそんなとこがあったからです。
②どうしようもない者
「忘れ物は、ある。だから来た」
渡海が忘れてしまった、物ではないものを掴みに。その手にまた縄を握るために。
賭けはどうやら瑛二の勝ちだ。勝利の栄光も相まって瑛二の口角はにぃっと上がり、渡海へ数歩近づいた。
「そんなら待ってた。歓迎するよ」
abyss 9はロープアートバー。女王様が築いたアナグラである。
この場所は、縛りたい、縛られたいという願いを持った、どうしようもない者のためにあるのだ。
この邂逅シーンはとても好きです。 当初「~歓迎するよ」でシーン転換にしていて、abyss 9は~のくだりは書いてなかった。更新予約の直前で入れました。
瑠衣をちゃんと縛れなかったのは悔しいだろ、縛ってやりたいだろ、って瑛二が言った気がした。
③尊いってやつ
瑛二が言うと、渡海がようやく稜に気づく。稜は渡海に目を向け、合点がいったように顎を突き上げた。
「あれだ、ルカとメリーナがはしゃいでた『尊い』ってやつね。まあアビスだしね、そういうこともあるか」
「バカ言ってねえでこっち来い」
呆れて瑛二が顎をしゃくると、稜がくすくすと肩を揺らして歩み寄ってきた。渡海は未だ稜がいることに理解が及んでいないのか、硬直したままだった。
貴重な稜のボケです。稜もたまにはボケてみるのです。普段ツッコミお疲れさま。助かってるよ、ありがとう。
アビスには結構訳ありカップルが訪れます。予約ができるのと、アナグラ感がいいのでしょう。
④呼び捨て
「瑛二さんは『綺麗にする』、稜さんは『乱れさせる』が信条だったと思うが、俺を縛った時、その、それでしばってたかどうか教えてほしい」
「っつかさん付けやめろ、気持ち悪ぃ」
「ちょ……」
瑛二の物言いを咎めるような顔を稜はしたが、渡海はすぐに謝罪を述べた。
「す、すまん……」
すぐ人に愛称をつける瑛二ですが、自分の名前の呼ばれ方は結構いろいろ。どう呼ばれたいかは、関係性や雰囲気など相手によってまちまちです。仕事相手とか丁寧な人柄の人がそう呼ぶ分にはいいみたいですが、渡海からは嫌だったようです。
あと結衣子が以前より「瑛二」と呼ばなくなったのを、実はちょっとだけ寂しく思ってます。だからなのか、心なしか「結衣子」と呼ぶことが増えてますね。
稜「瑛二」
瑛二「……なんか無性にウゼェ」
稜「うん、俺もしっくりこない。ルカは呼び捨てしないまんまだね」
瑛二「違和感あってヤダって言うんだよな」
稜「ああ、わかる」
渡海「……瑛二さん」
瑛二「だから気持ち悪ぃっつっただろ」
……とかね。
⑤暗黙の了解
「違う縄痕?」
瑛二は稜を、稜は瑛二を、それぞれ指差した。渡海が納得したような顔になり、瑛二はため息交じりに笑った。
「そこで怒れりゃ健全だがな、ライバル心が芽生えちまった」
「お互いね。彼女が肌を隠すボンデージを着てる時は、覚えのない方は誘わない。そんな暗黙の了解があった」
ボンデージのこれはちょっとした裏設定ですねー。縄痕には一瞬出てきたかな?
ちな、瑛二がいつも店にふらっと現れていたのは、「今日会えるか?」「ちょっと無理」みたいなやり取りが嫌だから、だったりもしました。アポなしで訪れて駄目なら諦めがつきやすい。そんな理由。
⑥仮面がぺろり
「稜に縛られているときは、……その……、ぞくぞくしたっつーか、なんというか……エロいというか……」
何度も口ごもっては、居心地が悪そうに視線をあちらこちらへ落ち着きなく動かす。
稜のそれを受けていたあいだは、瑛二の時よりもずっと息が荒かった。色っぽいと稜が言っていたが、事実その通りでもあった。
「……やっぱ潜在的マゾかな」
ぼそっと稜が呟いた瞬間、渡海の目が動転したように大きくなった。
顕著な反応に、稜は手で口を覆った顔を逸らし、つまみの皿を持ち上げた。渡海へ差し出す腕がぷるぷると震えている。
「ごめん、うそうそ、冗談。ブルスケッタ食べて」
渡海くんの純な一面に、ついツッコミを入れちゃうサディスト稜。
結衣子に振り回されてる渡海を見ていた稜は、彼を「律儀で臆病なカッコつけ屋」と評してます。それが剥がれたのが楽しくて仕方ないようです。
⑦ぎわくのDT
渡海を見れば首も耳も赤い。まるでまったく免疫がないかのような過剰な反応に、瑛二は思わず真顔になる。
「……マサ、お前童貞じゃねえよな」
「はっ!?」
「や、随分ウブな反応するからよ」
ぎょっとした渡海に瑛二が指摘すると、彼の目があからさまに宙をさまよった。
「それはないでしょ、瑠衣さんと付き合ってたんだし。ねえ」
稜はポーカーフェイスを貫いているが、面白がっているのは明らかだ。
「ん? ルゥと付き合ったの何歳のときだ? 専属が三年で、その前からで……」
この際一切合切喋ってもらおう。
瑛二が顎に手をやって考える素振りをしていると、渡海が古びたブリキのロボットのようにぎこちなく顔を逸らした。
「……二十九か、三十だ……」
瑛二の口元が思わず緩んだ。次の瞬間稜がぼそっと「初体験」と声を滑り込ませる。
渡海の身体が大げさなほど脈打ち、またカクカクと稜の方へ戻ってきた。
「もしかしてお前ルゥが初めてか!?」
気分がはしゃぐのを堪えきれず、瑛二は床をバンッと叩いて身体を前のめりにした。
当たりですよ、たにざきさん!! 私もここ大好きです!!!
こいつらかわいい。ほんとかわいい。もう男縄会編のハイライトですねここ。書きながらくすくす笑いが止まりませんでした。
⑧分析とその一方で
「多分、腕を縛ってから最初の胸縄を留めるまでのあいだ、言葉巧みに少しずつ先生を煽ったんだと思う。彼女の思惑通り先生は本気になって、あの胸縄を決めたあと、前の三人にはしなかった吊りをした。そのとき目が合ったのは、彼女が俺に『お願い』するためだ。いや、お願いなんてぬるいな、あれは命令だった。『邪魔するな』って」
「そういうことだったのか……」
渡海が納得する横で、瑛二も自身が撮った写真を思い返す。
結衣子は端から本気で縛らせる気でいたはずだ。その分集中もしていただろう。稜に目配せしただけでも、結衣子にしたら相当親切だ。
「そんとき、どう思った?」
渡海が真剣な目で稜を見る。稜の双眸には、落胆とも諦観ともとれる色が滲んでいた。
「……縛られたいんだなって。本気の縄を受けたくなったんだなって思った。だって彼女は、現役当時の先生の縄を知ってる。物足りなかったのかもしれないし、ほかの外的要因もあったかもね。聞いてないからわからないけど」
結衣子は喋らないと決めたら喋らない。稜は黙って考え込むタイプ。こうして話せるくらい整理はついたけど、もやもや……な感じですね。
結衣子の過去も、できることなら認めたい。けど彼女は話してくれない。そんな不満が最後にちょこっとこぼれました。
そしてこれは、瑛二も聞かなかっただろうこと。渡海に聞かれて、彼もほっとしたことでしょう。
⑨遥香の心に残ったもの
「見てほしい、見ないでほしいってそりゃあ、結衣子の言葉だ。こいつらの前で結衣子が俺に縛られながら、何を考えて縄を受けてるのかを語った。全裸でな」
もう随分前のことである。急な頼みだったが、どこかの菓子を渡して手を打った。
遥香のために彼女が涙ながらに語った言葉は、嘘偽りない本音だ。瑛二が理解していた一方、どこかで目を背けてもいたそれらは、耳が痛くもあったし、同時に心に重く響いた。それでも瑛二には、結衣子を抱くしかできなかった。
遥香の緊縛に対する姿勢は、それから大きく変化した。抗いきれない癖を持つ者の声を、彼女なりに受け止めた結果だろう。
女王・縄痕でおなじみ結衣子の実況シーン。
特に女王では、ここが遥香の転機になっています。瑛二にとってはそれが誇らしかったりします。もしもそれで遥香がなんの変化もなかったら、ここでも見限ることをしてたはず。
⑩縄で縛るという行為
「縄で縛るってのがどういう行為か、ここ最近でお前もいろいろ知っただろ。整理ついでにアユに話しながら、手遊びでもいい、縄に触れてもらえ。どんな関係であっても受け手はいつも命がけなんだ。命の代償に愛されでもしなきゃ浮かばれねえよ」
そう言ってふと、瑛二は今まで縄で縛ってきた者たちを思い返した。
戸惑い、悦び、喘ぎ、乱れては恥じらう彼女たちを、綺麗にしてやろうといつも思いながら縄を手繰った。何枚も写真に撮り、ちゃんと見ていたことを彼女たちの中に残してきた。
その思い出の奥に、透明感のあるソプラノで「縛って」と告げる、女の険しい顔があった。
瑛二も緊縛師。十年結衣子と過ごしてます。講習を開くこともしています。緊縛がどういう行為か、またそれをなぜ求められるのか、たくさん考えた人間です。
傍目でも情熱を感じられなかった渡海の縄を、複雑な気持ちで見てしまった。自身も癖を持ってるがゆえの言葉は、渡海くんに響いたようです。
⑪緊縛師
「さっきは茶化しちまったが、一個言っとく。たとえ俺が誰を縛ってたとしても、受け手が俺以外の奴と目を合わせたまま酔ったとしたら、誰であっても腹が立つ。そこで怒ったお前は正しい」
渡海は目を開いたあと、表情を引き締める。瑛二はそれに、大きくうなずく。
「心配すんな。誰がなんと言おうと、お前はちゃんと緊縛師だよ」
このセリフは、元々最終盤に出す予定でいました。だけど期せずしてこういう場が設けられ、ここで言う運びになりました。渡海の自信を回復できたのではないかと思えたシーンです。瑛二は渡海を応援してるよ。
男縄会は瑛二・渡海・稜の三人兄弟を描いてる気分でした。
瑛二は長男、気質全開。稜は姉と妹に挟まれた中間子で、男兄弟に憧れたクチ。そこに一人っ子の渡海くんが加わって、わちゃわちゃもバランスもいい感じになった気がします。
それでは明日の谷崎さんの追憶萌えにつなぎまーす!
褒められると嬉しいからすーぐSSとか書こうとしますよ、多分ふたりとも!
0コメント