私が好きなシーン(乳蜜

こんばんは!

谷崎さんがラストステージに向かってせこせこしてるあいだ、女王様のほうはあまりエピソードがなかったため、谷崎さんの持ってるいくつかの裏設定をいただいてはノンプロットでヒーヒーしながら書くというマゾいことをしているサイジョーサイコです!

お尻に火がついてる感じがヤヴァいね! 

ってことで、張り切って乳蜜@仲秋邸編の萌えポイントいってみましょー!


①じゃあ、お先に

 まるで罪人のように白い単衣姿の女が、諦めの表情を浮かべているものを殊更好んでいたと記憶している。仲秋は、最後の舞台でルイを受け手にして、それをやろうとしているのだろう。それが分かった途端ため息が出た。
「先生から話を聞いたときは驚いたわ。まさか、そんな演出を考えていたとは思っていなかったから」
 でも、とルイは、落ち着いた声で続ける 。
「やってみようと思ってる」
 下げていた目線をルイに向けると、彼女から真面目な顔を向けられていた。
 まっすぐ向けられている瞳には不安はなく、その代わり決意が浮かんでいる。その目を見て、渡海は苦笑した。
 どうしてきつい縛りに挑もうとしているのかなど、わざわざ考えなくてもわかる。結衣子の店であれだけ追い詰められた末に、彼女が本来持っていた意地が目を覚ましただけの話だ。
 彼女は自分よりも仕事に対しての意識が高いし矜恃もある。だから四年前、自分が向けた悋気に怯むことなく我を通したのだから。
 そんな彼女だから好きになった。それに独占したかったし、側に居続けてほしかった。でも、それは所詮自分勝手な考えだ。そこに彼女の意思はない。
 この三年、自分はルイに甘え過ぎていたのかもしれない。いや、甘えていたのだ。側にいるのが当たり前だと思っていたから。そのことに渡海はようやく気がついた。

瑠衣が渡海に先んじて自分のすべきことを見つけていく一幕。読んでふと、ベルリンのステージ直前、彼女が渡海に「じゃあ、お先に」って舞台へ向かったところを思い出したのです。

先をいく彼女と、あとを追う彼。この構図は終始つきまとっています。本当は瑠衣は「一緒に行こう」って思ってるはずなのにね。 それを見ながら私はいつも「渡海くん、君はそれでいいのかい?」って、もだもだと思ってしまうのです。 


②浴衣と先生

「昨日、先生に頼まれて浴衣を出したんだけどね」
「うん」
「ルカちゃんが着ている浴衣を出したとき、先生が手伝いにきたの。急に」
 ルイの視線が遥香に向いた。渡海はそれを追いかけたが、すぐに視線をルイに戻す。
「うん、それで?」
「先生、結衣子さんが着ている浴衣は自分が出すって言い出して……」
 渡海は眉を寄せた。
 結衣子がいた方へ目線を走らせるが、彼女は仲秋の隣ではなく彼女の夫の側にいた。とっさに仲秋を見ると、笑みを浮かべながら彼らを眺めているようだった。しかし、その笑みが寂しげな笑みに見えてしまい、渡海は疑念を抱く。
 どうして師がそのような笑みを浮かべているのか考えたけれど、その理由に思い当たるものはない。
「浴衣を眺めていた先生は、とても満足そうな顔をされていたわ。そう、眩しいものでも見るみたいに目を細めていらしてね……」

先生の純なところが窺えるシーン。これは蛇で瑠衣視点から書かれてもいます。

先生も先生で、独占欲があるわけです。さみしいものですけども。


③一番弟子と、姉弟子と

 「なんであんたはあの胸縄のやり方を教えてもらったんだ?」
  先ほどと打って変わって機嫌が良い結衣子に聞いたものは、ずっと渡海が不思議に思っていたものだった。
 すると予想もしない問いが返ってきた。
「逆になんであなたはあの胸縄のやり方を教えてもらわなかったの?」
 急に真剣な目を向けられて、渡海はたじろいだ。
「なんでって……」
 縛りを学んだきっかけがきっかけだ。仲秋が持っている技を学ぶより、とにかく縛りを覚えたくて必死だった。
 そう言えば済む話だが、どういうわけか渡海は結衣子に答えることができなかった。
「……先行くわ。そのどらやき、美味しいからぜひ食べて」
 結衣子から冷たくあしらわれたことが気に入らず、渡海は食ってかかる。
「答えになってないぞ」
 噛みつく勢いで言い放つが、結衣子は全く動じていない。
「教えるのも無粋だって言ってるのよ。先生の性格ならよくわかるでしょ、一番弟子さん」

渡海と結衣子、それぞれの性格と、なにを思い縄を握ったかの違いが顕著に出たエピだと思います。

それにしても渡海くんは本当に結衣子が苦手だな……w 


④心ゆくまで

 「ルカと稜に見せる手本の受け手を頼む」
 新しい縄を両手に抱えて仲秋のもとへ向かうと、想定外の言葉を掛けられた。断る理由もなく渋々受け手となったが、ルイのことが気になって仕方がない。渡海は、庭に面した窓側にいる結衣子たちの様子を窺いながら仲秋に背中を預けた。
 だが、心ここにあらずを見抜かれてしまったのだろう。仲秋に要所要所を締められてしまい、思いがけず責め縄を味わう羽目になった。
「マサキ、よく覚えておくんだぞ」
「え?」
「もう、お前を縛ることもないだろうからな。わたしの縄を心ゆくまで味わえ」

縄を心ゆくまで味わう。この時の渡海くんはまだそれがどういうことかわかってないんですよねぇ。 そしてこれがなかったら、ルカが先生に「みんなを縛って」と言うことも恐らくなかった。

罪深いシーンでもあります。 


⑤長い道のり

「女王サマが結婚するって聞いたとき、あんた、何考えた?」
 結衣子と瑛二の付き合いはかなり長い。それに関係性が変わっている。関係の内容はともかく、自分たちと似たものを感じ取り、聞いたのだが、返事は期待しなかった。だが……。
「ほっとしたよ。嬉しかったし、やっと決めたかと思った。寂しかったけどな」
 期待しなかった上に、聞いて良かったのか後悔さえしていただけに渡海は驚いた。ぎこちない動きで瑛二を見ると、目が合った直後露骨なまでに嫌な顔をされた。
「なんだよ、その顔。聞かれたから答えたっつーのに」
「い、いや。あっさり答えたから、その……。驚いたんだ」
 動揺しながら返事をすると、思いもよらない言葉となって返ってきた。気まずさからしどろもどろになっていると、瑛二が呆れたようなため息をつく。
「あっさり答えたからって、あっさりそこにたどり着いたわけじゃねえよ」

最後の一文は、谷崎さんが元原稿を書いてくださったものそのままです。

互いのキャラクタと積極的に絡む時は、チャット風打ち合わせか、口調や言葉選びのチェックをするかのどちらかなのですが、この時はチェックのみ。で、この一文に痺れました。私が書いても書けなかったと思います。 

瑛二への理解を感じてすごく嬉しかったです。


⑥向き合うということ

「向き合えって言われても、どうしたらいいか分かんねえよ」
 目線を下げと、また裾をつんっと引っ張られた。
「向き合うってどういうことなのかしらね。言葉を掛け合う。目を合わせる……」
 でも、とルイは続けた。
「そういう目に見えるサインがポーズになっている人もいるから、そういったものではなくて意識を相手に向けるっていうことかしらね」
 裾をしっかり掴んでいる白い手を見下ろしながら、渡海はつぶやいた。
「意識、か……」
「ええ。大事なのはポーズじゃなく意識だと思うわ。分からないなら、相手の話を聞いたあと考えてみることから始めてみたらどうかしら」

ルカマジックがきっかけで、気づきに繋がった渡海。だけど、その真意には気づいておりません。

渡海の救いは、パートナーで戦友でもある瑠衣の存在だなあと思います。周りが好き勝手言うからね!


⑦本気の姿を傍観する

 彼女が向けた視線の先では、稜が気遣わしげな表情を浮かべ身を乗り出していた。瑛二は顔を険しくさせているし、遥香に至っては不安げだ。彼らと結衣子を交互に眺めていると、縄を留め終えた仲秋が結衣子と稜の間に割って入ってきた。
 それが結衣子の退路を断ったように見えたのは、決して気のせいではないだろう。師は何をしようとしているのか分からず、渡海は仲秋の背中を注視する。
 すると突然、仲秋が笑い声を漏らした。しかし、明るい声では無くほの暗い笑い声だった。その声を耳にした瞬間、背筋に震えが走った。渡海はごくりと唾を飲む。
 ただならぬ空気を発する師の背中を見つめていると、急に仲秋の声が部屋に響いた。
「マサキ。縄をくれ。全然足りん」
 厳しい声が聞こえた直後、渡海は弾かれたようにその場をあとにし、縄を取りに行く。壁に掛かっている縄を急いで引き抜き、師のもとへ急いだ。
 仲秋の側に近づいたとき、渡海は目を疑った。
 結衣子が仲秋をにらみ付けながら指を噛んでいたからだった。

ここ、自分で書いていた時はそれはそれはハイになって「こいつらやべぇ(;゚∀゚)=3」だったんですが、渡海視点を読んだ時はゾッとしましたねー、「こいつらやべぇ……((((;゚Д゚))))」ってなりました。 

そりゃ怖いわ、と渡海くんと一緒になって変な自覚をしたものでした。 渡海くん災難です。縄持ってこさせちゃってごめんね。でも見てほしかったんだ……。 


⑧渡海、止める

「先生」
  渡海は結衣子を挟んだ先にいる仲秋に、低い声で呼び掛けた。
 しかし、耳に届いていないのか、険しい顔で裾を割りに掛かっている。渡海はそれを止めようとして、両腕を伸ばした。
 仲秋を止めようとして両手で肩を押さえると、鋭いまなざしを向けられた。
 欲望がむき出しになった目でにらまれてしまい、渡海は一瞬怯みそうになった。しかし、どうにかして止めなければ、結衣子の夫にあの日の自分のように苦い思いを抱えさせてしまうことになる。それが嫌だった。
 渡海は腹に力を込めて、師をにらみ返した。高ぶる怒りをぐっと抑え込み、もう一度呼び掛ける。
「先生。……そろそろ」
 押さえた体の熱が、布越しに伝ってくる。それは体温というには高すぎた。興奮しきりの師の額には汗が浮かんでいた。加虐の欲にとりつかれてしまった師の瞳を正面からにらみつけていると、ようやく気づいたのか仲秋は顔をハッとさせた。  

瑠衣の初舞台、無力さや後悔を味わった苦い思い出が、渡海を突き動かした瞬間。

止めてくれてありがとう。君の行動は、稜と瑛二と遥香を確実に救ってくれたよ。


⑨そばにいる理由はそれぞれで

 「あんたの大事な人だろうが! ちゃんと守れ!」
  肩を掴んで、稜に詰め寄ると、「そんなの彼女は願ってない!」と、言い放った。
「守るためじゃない。俺は彼女の願いを叶えるためにそばにいるんだ。これは、俺と彼女の……、根の部分の問題だ」
 怒気を孕んだ声で言い返された。
 根の部分という言葉が、稜の肩を掴んだ手を離れさせる。
 何が根の問題だ。そんなもの関係ない。大事な人を守る為に側にいるんじゃないのか。渡海はそう言いたかったけれど、言えなくなった。
「縛られることを彼女が望んだ。それを止めるなんて俺にはできない」
 そう言葉では言ってはいるが、稜の表情は苦しげだった。
 なるほど、これが瑛二が言っていたことか。渡海は瑛二から聞かされた言葉を振り返る。
 稜は、結衣子が求めるものを迷うことなく差し出したが、瑛二はそれができなかったと言っていた。それはつまり、結衣子に全てを捧げる覚悟が稜にはあるということだ。それに、結衣子の求めるものを差し出す一方で、そのことで抱えてしまうものを背負う覚悟も当然。
 瑛二だけじゃない。自分もそれはできないだろう。だからルイを束縛したし傷つけた。 
~中略~
「渡海さん、止めてくれてありがとうございました」
 背後から稜の声がした。しかし、渡海は立ち止まることなく顔をしかめさせた。
「俺たちだけだったら、彼女が犯されても動けなかったかもしれない」
 仲秋を止められなかった悔しさと後悔が滲んだような声だった。  

同じシーンは追憶にもあるけど、私は断然乳蜜のほうを推します。渡海視点だからいいのだよこのシーンは。 

理解できなくていい、愛し方や愛され方がどうしようもなく下手な生き物、と稜ものちに語ります。そして渡海も少しずつ、癖を持つ者のさみしさに触れていくことになるのです。 


⑩手折ったもの

  玄関の外へ出ると、仲秋は先ほどと同じように紅梅を眺めていた。
 瑛二が師に怒りをぶつけたことは明らかだ。あの勢いで仲秋に迫ったに違いない。
 渡海は師の背中を眺めながら、そろそろと近づく。
 すると、それまで立ち尽くしていたはずの師の手が、梅の枝に伸びた。
 何をするかと思い様子を窺っていると、仲秋は細い枝を掴み目線を下げた。
「……もう、遅い」
 ため息とともに聞こえた声は沈んでいた。
 つぶやくような声のあとパキッと音がして、そちらに目をやると、師が大事にしていた梅の木の枝を折っている。

ああああああああああ(語彙力喪失 


⑪踏んだり蹴ったり

「ルイさんからの伝言です。支払いよろしくね、だそうです。チキンピラフとフルーツポンチ、チーズケーキにジンジャーエール。すべて渡海さんの支払いにつけておきました」
 にっと笑った光を、渡海はじろりとにらみ付けた。
「話を聞いてなかったでしょう? そのお返しだって、ルイさん言ってました」
「だからって、そりゃないだろ……」

 いろんなことがあった挙げ句、最後に瑠衣からこの仕打ち。 

とはいえ、そりゃあ話も聞けなくなるよね……だってさ、だってさ、①から⑩まで全部、その日のうちに起こってるからね!? 

だけど、瑠衣はタフです。渡海くんはまだうじうじしてます。だがそこがいいんだよなぁ……。 


という感じで、ぱーっと並べてみました! 

結衣子と先生の伏線回収の回だったので、こうしたい! っていうのを谷崎さんに押し通した感が少なからずあります。それでも谷崎さんは「いいよ」って、認めてくださって、すんごく嬉しかったです。

渡海くんが特にいい動きをしてくださった。もう感謝感謝。


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ではお次は、先生のステージ編。谷崎さんの自萌えにつなぎたいとおもいまーす!