わたしが好きなシーン(自萌え

こんばんは、谷崎です。

長いお休みに入り、西条さんともども最後半を書き上げているのですが。


「また、あれ、やろうよー」

と西条さんから誘われたので、今回も「わたしが好きなシーン」シリーズを日替わりでお届けしたいと思います。


1,渡海、師に縛られる

「マサキ、よく覚えておくんだぞ」
「え?」
「もう、お前を縛ることもないだろうからな。わたしの縄を心ゆくまで味わえ」
 仲秋は背後で縄をきつく締めた。
 危うく声を漏らしそうになったが渡海は耐えた。ふーっと息を吐きながら体の力を抜くと、ちょうど良い締め付けになった。
 仲秋の縄は最後に縛られたときと何一つ変わっていない。力強く抱き締めるような縄は、まだまだ健在だった。
 還暦を過ぎても体力に見合う縛りを行う縄師は多い。それなのにどうして仲秋は引退を決めたのか、今更ながら気になった。


結衣子たちが仲秋邸を訪れた際の一コマ。

緊縛は、縛られることも修行です。縛られてみないと分からないから、縄を学ぶ際にはほぼほぼ縛られるそうです。

渡海と仲秋の関係は弟子と師匠というより、息子と父親っていう感じに限り無く近いです。

※この下りはいずれ蛇で登場する予定


2,瑛二、過去を切り出す

「お前が抱えているもんがなんなのかは知らん。お前とあいつがどんな関係だったか、どんな関係なのか、そんなもんもどうでもいい」
 瑛二は前置きしたあと、きっぱりと言い切った。
「緊縛師と受け手の間にあっていいものは信頼だけだ。それ以外の感情を持つと、その情で雁字搦めになっちまう。それをやっとの思いで乗り越えた男の話にちょっと付き合え」


今回のコラボでわたしが希望したのは「答え合わせ」でした。西条さんの作品「女王のレッスン」や「縄痕に口づけを」が好きすぎて、何度も読み返して、「きっとああなんだろうな」と思っていたことの答え合わせがしたかった。

というのは、設定上、結衣子と瑛二、ルイと渡海の関係はものすごく似ている。だからコラボ企画の打ち合わせの際、答え合わせがしたいんだよねと申し出たところ、こんな面倒くさい話になりましたよ、っと。

でも、わたしは満足です。西条さんと書き下ろしの打ち合わせをしていたときに「ああ、やっぱりそうだったか」と思えるものばかりだったので・・・。


3,稜、打ち明ける

「理解できないでしょ。俺たちも、理解されようなんて思ってない」
 でも、と彼は更に続ける。
「でも、心のどこかに誰かに認めてほしい気持ちが残ってる。だから俺たちは、店のフロアに立つんだ」


西条さんの原稿のこの部分を読んだとき、胸が締め付けられました。

女王のレッスンや縄痕にくちづけには、稜や瑛二が自らの癖に気づいたときのことを語っているものがあります。それはそのまま彼らの癖や信条に深く結びついているんですが、世間一般的なものではないと自覚したとき、彼らはその事実をどんなふうに受けとめられたのだろうか、と思うのです。

台所で稜と交わしたこの会話は、のちのち渡海にとっての「鍵」になります。(大いなるネタバレ


4.もう、遅いとは・・・

 玄関の外へ出ると、仲秋は先ほどと同じように紅梅を眺めていた。
 瑛二が師に怒りをぶつけたことは明らかだ。あの勢いで仲秋に迫ったに違いない。
 渡海は師の背中を眺めながら、そろそろと近づく。
 すると、それまで立ち尽くしていたはずの師の手が、梅の枝に伸びた。
 何をするかと思い様子を窺っていると、仲秋は細い枝を掴み目線を下げた。
「……もう、遅い」
 ため息とともに聞こえた声は沈んでいた。
 つぶやくような声のあとパキッと音がして、そちらに目をやると、師が大事にしていた梅の木の枝を折っている。
 その姿を目にしたとき、見てはいけないものを見た気がしたが、渡海はあえて師を呼んだ。

このシーンは割と早い段階で決まった記憶があります。

仲秋センセーは尾形光琳の紅白梅図が大好き。(わたしが大好きなのでw

この紅白梅図、紅梅と白梅の間に黒い川のようなものがあるんですが、これが「隔たり」に思えてなりませんでした。ともに並び立つ紅梅・白梅は二人の女性をあらわしています。赤いボタンと白いボタンであらわした結衣子とルイです。

先生が手折ったのはどちらの枝か、それはあえてもうしません。


今回は仲秋邸での自萌えシーンをお届けいたしました。

次回は西条さんの追憶でも萌えシーンを語りたいと思います。


現在最後半を頑張って書いています。

励ましのコメントやこれまでの感想など、お待ちしております♡

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谷崎文音拝