【かのこ×西条彩子×谷崎文音 コラボ企画】総括

「緊縛に関わる四人の男女」「複雑に絡むそれぞれの感情」「とらわれの過去」

お話を形作る要素や設定が同じにもかかわらず、片や情と癖の狭間で揺れる男女の性愛を、片や過去にとらわれたままだった男女の恋愛を描いたものとなりました。また、それに繋がるお話で締めを飾って下さるのは、かのこさん。

2020年上半期に行ったコラボは、乗り越えた男女が乗り越えようとしている男女に関わるものとなっただけでなく、それまで一歩を踏み出せなかった男女の背中を押すものになりました。


緊縛やSMというと、世間的にはアブノーマルな行為としてしか思われていませんが、果たしてそれだけでしょうか?

サディストはマゾヒストがいなければ存在価値はありません。いわゆる御主人様だって服従するものがいなければサディスト同様存在する意味がない。だからといってマゾヒストやサブミッシブが偉いというわけではなく、お互いその関係性に同意しているという点では対等なのです。

しかし、わたしがかつて読んでしまったようなSM作品や緊縛作品はそういうことは書いていませんでした。男が女を一方的に蹂躙する、そしてそれを女性は甘んじて受け入れているだけでなく快感さえ抱くようになっていく。それが理解できなかったから、わたしは興味を抱いたのです。


「イヴのめざめ」で触れましたが、日本に多く出回る性的なコンテンツは男性を対象としているものばかり。これらは、女性が求めるものとは全く異なっているんじゃないかとわたしは思います。じゃあ、女性が読みたい官能小説ってなんだ?と考え続けていますが、いまだにそれが分かりません。わたしの場合は、だから書き続けているし、書き続けながら考えているのだと思います。

2020年は、この企画に参加して求めていた答えの一端に触れることが出来ましたが、わたしが求めている答えは一つではないかもしれない。でも、数多く存在する答えの一つでも見つけることができたらいいなと思っています。


年明け早々、西条さんが番外編「乳蜜と追憶の交わるところ」を公開します。そしてわたし自身も「蛇は密やかにそのときを待つ」を完結まで書き上げる予定です。また、かのこさんも現在連載中の「嘘つきたちの遊戯」を完結させる予定とのこと。

決して万人受けはしないものばかり書く三人です。その三人の背中を読者さんの声が押してくれる限り書き続けたいと思います。

2021年もよろしくお願いいたします。


谷崎文音拝